北アルプス最深部ぐるっと一周
(2日目)薬師峠キャンプ場から太郎平、北ノ俣岳、黒部五郎岳、黒部五郎小舎キャンプ場
2010年9月24日(北アルプスの全ての山が展望できる曇り)
私達夫婦2名のパーティー(テント泊)
【登山概要】 二日目は太郎平から黒部五郎屋まで西銀座ダイヤモンドと呼ばれる最高の展望を持つルート。 太郎平から北ノ俣岳、赤木岳となだらかな稜線から北アルプスの全ての山が見渡せた。この日は快晴ではなく、曇ってはいたが、眼下にはどこまでも雲海が広がり、正面に水晶岳、雲の平、黒部五郎岳、笠ヶ岳、乗鞍岳、御嶽を望みながら、次第に、薬師岳の左側に剱岳が見え、北ノ俣岳あたりから鹿島槍、五竜岳、白馬岳そして立山に剱岳まで北アルプスの山々はすべて見渡せた。他のルートではここまでの山々の展望を一堂に臨むことはないと思われ、ダイヤモンドコースと呼ばれる人気のルートが理解できた。しかし、太郎平から黒部五郎まではかなり遠く、黒部五郎岳への急な登りはとても大変で、黒部五郎小舎へのを登る下りはとても長く感じられた。とくに疲れた足でのカールへの急な下りで、私たちの隣でテントを張っていた3人のパーティーの男性が崖から滑落した。 |
【ルートタイム】 6時40分:薬師峠キャンプ場(発)⇒7時19分:太郎平小屋⇒7時20分:黒部五郎岳:薬師沢分岐⇒7時28分:太郎山⇒(1時間35分)⇒9時52分:北ノ俣岳⇒11時17分:赤木岳⇒(2時間20分)⇒12時00分:中俣乗越⇒12時53分:黒部五郎岳取りつきの小コル⇒14時13分:黒部五郎岳の肩⇒14時33分:黒部五郎岳山頂(着)⇒14時40分:黒部五郎岳(発)⇒14時50分:黒部五郎岳の肩⇒14時58分:稜線のカールへの下り地点⇒16時47分:黒部五郎小舎 |
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6時40分 | 前日の疲れと濡れた装備の整理で出発時間が遅くなってしまった。 |
なだらかなピークを越えて太郎平小屋に着いた頃はまだ霧の中だった。 詳細写真(6) |
7時12分 | ![]() |
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7時20分 | 左に下ると薬師沢 右に進むと黒部五郎岳への西銀座ダイヤモンドコース |
太郎山(標高2372.9m)の山頂は右に曲がるとすぐ。 | 7時28分 | ![]() |
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7時44分 | このあたりは夏場はお花畑であるが、季節も終わりイワイチョウ等の紅葉が始まっていた。 |
北ノ俣岳につながる稜線にたどり着くと正面に黒部五郎岳とこれから歩く北ノ俣岳、赤木岳が見える。 黒部五郎岳の奥に見える笠ヶ岳。 |
9時2分 | ![]() |
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9時52分 | 北ノ俣岳の山頂 ケルンの建つ広い山頂は360度のパノラマが広がる。 ここで朝食を摂る。 |
北ノ俣岳から黒部五郎まではご覧のとおりなだらかなルートが続く。 笠ヶ岳、乗鞍岳、御嶽が見える。 ここからとりあえず次のポイントは中俣乗越。 赤木岳からか下りきった黒部五郎岳の手前にある小ピークの手前のコルである。 |
10時30分 | ![]() |
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11時00分 | 赤木岳 赤木岳の山頂は通過せず北側を巻く。 詳細写真(7) |
下が中俣乗越 手前に見える小ピークの手前が中俣乗越 中俣乗り越しに降りてからいったん右側にのぼりそして小ピークの黒部川側に巻きながら小ピークの裏側にでる。 |
11時47分 | ![]() |
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11時55分 | 中俣乗越 ここから黒部五郎岳山頂まで約2時間がルートタイムだが。 |
中俣乗越からの登り。 正面に白馬岳などの山々が次々と見えてくる。 |
12時16分 | ![]() |
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12時39分 | 小ピークを越えると正面に黒部五郎岳が聳える。 山頂左側の白い場所が黒部五郎岳の肩でそこに着く。 |
黒部五郎岳直下のコル。 ここから右の尾根に登ってから山頂に向かてジグザグに登る。 |
12時53分 | ![]() |
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13時06分 | 尾根を越えて黒部五郎岳への急な登りになる。 |
黒部五郎岳への登りは急で目印がないが急斜面上部にある子犬のような岩が唯一の目印である。 詳細写真(8) |
13時49分 | ![]() |
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14時6分 | ハイ松帯が出てくるともうすぐ黒部五郎岳の肩に抜けるゴーロタイの巻き道に出る。 |
正面は黒部五郎岳の肩 この真っ白いゴーロの岩場を真っ直ぐに登ると肩に出る。 |
14時08分 | ![]() |
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14時13分 | 黒部五郎岳の肩 正面が黒部五郎岳山頂 黒部五郎岳の名前の由来になったように山頂周辺は大きな石がゴロゴロした山頂でした。 肩から山頂までは約20分ほど。 |
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14時33分 標高:2840m 山頂からは槍ヶ岳穂高も望め、三角点もある。 |
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14時59分 | 肩から数分の黒部五郎岳のカールへ降りるポイント。 正面が三俣蓮華岳でその下に黒部五郎小舎が見えている |
カールの底から黒部五郎岳を仰ぎ見る。 上部には雪渓も残り、カールには大きな岩がゴロゴロしている。 詳細写真(9) |
15時19分 | ![]() |
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16時06分 | 黒部五郎小舎への長い下りが続く。 疲れた足にはこのゴロゴロした岩場の下りは応える。 カールの底を抜け灌木帯になってもそれから小舎までかなり歩かねばならない。 |
黒部五郎小舎 テント場は小屋の右側に数分の場所。 水場トイレは小屋まで歩いてくる必要がある。 水平な砂地のテントを張りやすい場所である。 |
16時43分 | ![]() |
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左 小舎から見たテント場 笠ヶ岳とその稜線 ⇒小舎の夕食 テント泊であるが小舎飯と決めていた。とてもおいしい小舎飯でした。 |
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![]() 私達が肩から山頂に向かっている途中(14時23分)で大きな声が聞こえ、振り向くとカールを下る崖の登山道の上部から登山者が滑落していた。薬師峠のキャンプ場でとなりでテントを張っていた3人組のパーティーで黒部五郎岳の肩で別れるときに挨拶を交わしたばかりの男性が滑落していた。私たちの持っている無線装備が役に立つのではないかと山頂を楽しむのもそこそこに崖を降りていくと、滑落した跡の岩が崩れているのがはっきり確認できた。上で見ていてしばらく動かなかったが、私たちがカールの下に着くころには歩き出していた。前方向に4回転回転して滑落したが何とか歩ける状態らしく妻が、「湿布薬などフーストエイドキットを持ってので使いますか」と助力を申し出ると、パーティーでも持っており出血がある部分があり貼付していないという。骨折はない様子で少し放心状態で吐き気などがあるが歩ける状態で、私たちが先に小屋についてもう一パーティー後から来ると伝えてくれと頼まれて先を急いだ。後で滑落した男性のパーティーも小舎に着き滑落した男性は小屋どまりとなったが、食欲もなく少し吐き気がするということで打ちどころでも悪くなかったか心配したが、翌日ヘリコプターで移送した様子もなく、無事新穂高方面に下山したようであった。 |
【山岳遭難とアマチュア無線】 黒部五郎岳あたりでは携帯は全く使えない。 私達夫婦はハム(アマチュア無線家)であり山には必ず各自ハンディーの無線機を持っていく。今回も滑落地点から見通し距離で黒部五郎小屋が見えており通常であれば何の問題もなく交信できるため、無線の必要がないか現場に急いだが、特にその必要はなく何よりだった。小屋について管理人に無線の状況を聞くと、小屋では当然業務無線でありアマチュア無線の433.00Mhz等のメイン周波数をワッチしておらず、山でアマチュア無線が使われるのは、ほとんどの場合、無線を持っている登山者が発信した電波を下界(町の)のハムの無線局が受信し、それを警察なり消防経由で小屋に知らせが入るという。山で非常通信の電波を発信しても小屋や稜線でアマチュア無線のメインのバンドを開いている登山者かあるいは町のハム局に偶然受信されてそれを経由する以外にないようである。 今回のように崖の下に降りる場合には、妻を稜線に残こし、私が現場に降り下で状況を的確に妻に伝達し、妻が見通しのきく富山市方面または神岡方面のアマチュア無線局に向け非常通信の電波を出すことになるのだろうと、手順を確認した。久しぶりにハムであることを再確認させられ、夫婦で非常通信の手順を確認した事故であった。管理者夫婦は以前戸隠の雪山で滑落した救助を求める大学生のパーティーの非常通信を受信した経験があったため、スワ・・非常通信の場面かであったが、何事もなくてよかった。 |
【パワフルな71歳のアメリカ人のおじいさん】 黒部五郎小屋の食事は美味しいという評判だったので、2日目の夜は小屋飯。とても美味しかった。私の隣で食事をしていたアメリカ人の男性がその日、槍ヶ岳から黒部五郎小舎までやってきたとのこと。ほとんど日本語はできず私にガイドブックの単語を示して「おいしい。」と言っていた。聞くと、上高地から大雨の中、槍ヶ岳まで一日で登ったとのこと。妻が「大変ではなかった?」と質問したら「No Quiet」と返してきた。「たいしたことないよ。」と理解たが、翌日、太郎平に行き、雲の平から上高地まで一日で降りるという。物静かな71歳の男性で、底知れぬアメリカ人のパワーに脱帽であった。 |