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=========麹町ウォーカー(麹町遊歩人)No.69=========

桜前線北上中。麹町界隈の桜は、いかがでした。

H氏のHPで、これから開花を待つ北海道でも麹町の桜の開花する様子を楽しむことができました。

底冷えが続いたせいか、開花期間が例年に比べてずいぶんと永かったようですね。

とは言え、やっぱり春は桜です。昨年も取上げた麹町界隈の桜を、今回は違った角度でH氏がレポートしました。

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東京の桜の季節も盛りを過ぎようとしているが、麹町の桜はまだまだ楽しめる。今回は今年の桜の開花を振り返りながら麹町界隈の桜の名所につい紹介しよう。

 

3月になり麹町2丁目にある鶴屋八幡麹町店の店頭にある薄紫色のミツバツツジが咲くと千代田区に桜の季節がやってくる。

気象庁が発表する東京都の桜開花予想の基準木は、九段にある靖国神社境内の桜である。この桜の基準木は、本殿前の能舞台などがある広場に植えられた桜の中にあり、鉢巻のような白い布が巻きつけられている。基準木の枝に5輪ほどの桜の花が咲いたときに、開花宣言になるという。

平成16年の東京都の開花宣言は318日に出された。麹町ウぉーカーにとって、ほぼ毎日麹町5丁目にある会社から千鳥ヶ淵に通うという、せわしくもありまた楽しいひとときが始まった。

 

開花宣言は出たものの319日千鳥ヶ淵公園の桜はまだつぼみが固く、殆どの桜は咲いていなかった。とはいえ英国大使館の代官通代官通りから千鳥ヶ淵公園を望むり側の桜や大使館正面の桜、そして半蔵門の警備詰め所脇の公園の桜は例年早く咲き始める。千鳥ヶ淵公園の桜の開花は、日当たりのいい内堀通り(英国大使館)側に比べお堀(半蔵濠)側の桜は幾分遅くなる。

千鳥ヶ淵公園の桜を楽しむお勧めのスポットは代官通りの土手と皇居吹上の警備所の下である。ここからは公園の桜を一望することができ、さらに土手に上がると半蔵門とともに国会議事堂、最高裁判所と一緒に桜並木を望むことが出来る。国会議事堂、最高裁判所を望む

 

次に千鳥ヶ淵戦没者墓苑辺りから、ボート乗場〜インド大使館前〜靖国神社に至るお堀沿いの小道を遊歩してみよう。墓苑の入り口辺りの桜は幾分開花が遅いが、ボート乗場辺りの桜の開花が早く、特に北の丸土手や首都高速側の日当たりがいいため開花が早い。

ボート乗場から観桜すると、北の丸土手の桜とインド大使館側の桜が、お堀をはさんで両岸で競い合っており、そのはさまれたお堀の水面に色とりどりボートの浮かんでいる様子は最高のフレームワークとなる。

インド大使館前の桜は、樹齢も古く大きな桜の枝が濠に向かって、水面にとどきそうな見事な枝を伸ばし、桜のトンネルを作っている。

幾分薄暗い桜のトンネルの所々に少しだけ開けて北の丸田安門土手、日本武道館側土手の桜を手前の木の枝に邪魔されず観ることができるポイントがある。

千鳥ヶ淵田安門下の桜

手前にある薄暗い桜の枝が天然の見事なフレームを作り、北の丸側の明るく輝く純白の桜のコントラストを際立たせ、水面に色とりどりのボートが浮かび、その前に立つだけで素晴らしい写真を撮ることができる。ここが東京の桜の名所ということが実感できる。いや感激する。

今年は開花宣言が出てから寒い日が続き、満開になったのは10日後の327日頃であった。



四ツ谷駅周辺では、雙葉学園から市ヶ谷に向う土手の桜並木、イグナチオ教会から食違見附までの土手の桜並木、上智大学真田掘グ四ッ谷駅前の桜ランドの迎賓側土手の桜並木が見事である。

イグナチオ教会から食違見附までの土手の桜並木は、昭和39年に福田家さんが100本の桜を植えたものである(58号で紹介)。上智大学グランドの迎賓館側土手の桜は赤坂方面に下りながら植わっているが、ここが都電の赤坂見附方面に下っていく軌道の跡で、ソメイヨシノの後八重桜の名所として有名な場所であることは47号で紹介した。また千代田区番町の東郷公園は花見の名所であることは38号で、さらに江戸時代、大妻女子大学の校内にあった屋敷の桜が「佐野の桜」として有名であったことは41号で紹介した。

更にニューオオタニと清水谷公園の桜は、和風庭園の池に写る真っ白な桜の美を楽しむことができる。弁慶掘の桜は聳え立つ赤坂プリンスホテルを背景にして弁慶掘と弁慶橋の欄干の青銅(からかね)製の擬宝珠が風情を添えている。

半蔵門から内堀通りを桜田門方面に下るとすぐに国立劇場がある。国立劇場の正面玄関に小さいながら左右に広がった細い枝に豊満に純白の花を頂いた桜がある。「駿河桜」と呼ばれるもので千鳥ヶ淵のソメイヨシノより一足先に開く。この桜は職員が退職の記念に植えたもので、新種の桜であったという。国立劇場には他に「神代曙」、「小松乙女」というピンクの桜も見事である。隣の最高裁判所の桜並木、その先にある国立国会図書館の周囲の桜並木、国会前庭洋風庭園の枝垂桜、霞が関の外務省正面の桜並木もいい。そして日比谷公園の桜は紹介するに及ばないであろう。

 

次にJR市ヶ谷駅周辺を遊歩してみよう。駅前交番の裏の桜が、早く咲き始め、飯田橋までの土手は花見の名所になる。JR市ヶ谷駅から外堀通りに出る橋の上から防衛庁方面に目をやると、外堀通り沿いに見事な桜並木がある。JR市ヶ谷駅から飯田橋に向う土手の幅は比較的狭いのであるが、「アルカディア市ヶ谷私学会館」の向かいの土手からは靖国神社、法政大学から外堀通りに出る新見附橋と外堀通りの濠沿いに植えられた見事な桜並木を一望できる。市ヶ谷土手からの桜

このメルマガが配信される頃(411日)は千鳥ヶ淵のソメイヨシノはすでに散って葉桜になり始めているであろう。まさに在原業平の世の中に絶えて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし“の歌にあるように、日本人にとってお決まりの騒々しい季節が過ぎ去る。

 

しかしこれで桜の季節は終わりではない。これから八重桜の季節がやってくる。

千鳥ヶ淵公園の中央部辺りに満開のソメイヨシノのそばでひっそりと蕾を膨らませていた八重桜と枝垂桜が咲く。ソメイヨシノが散って訪れる人の少なくなり静かな千鳥ヶ淵公園の八重桜を楽しむことができる。

上智大学真田堀グランドと迎賓館の間にあった都電の線路跡にはピンクの八重桜が、外堀通りの車道沿いに真っ白でとても豊満な花を咲かせる。

そして清水谷公園前の通りは、ピンクの八重桜の花で埋め尽くされる。

JR四ッ谷駅側の心法寺には本堂の隣にピンクの八重桜が、同じ境内にある裏千家戸田即日庵の前には白の八重桜がある。千鳥ヶ淵公園4月9日の八重桜

千代田区麹町近辺は都心であるにもかかわらず桜の種類が豊富でソメイヨシノに始まり1ヶ月以上にもわたって桜が楽しめるポイントである。

 

330日の毎日新聞朝刊の「余禄」に能「西行桜」が紹介されていた。

西行法師の庵室の庭に咲く素晴らしい桜を一目見ようと訪れる人々の騒々しさに、法師が「花みんと群れつつ人の来るのみぞあたら桜のとがにやありける」と詠った。その夜その桜の老木の精が白髭の老人の姿をして法師の前に現れ「花に憂き世の咎(とが)はあらじ」とたしなめ、法師とともに桜を見る楽しみを詠って夜明けとともに姿を消すという能である。

以前この能を一緒に観たドイツ人の友人が食事の席で「季節の移り変わりを風雅として楽しむ心が日本人の美意識の根本である。自然の移り変わりを楽しめるのは日本人の特徴だ。」と言っていたことを思い出した。

国花でもある桜は、他の花と異なり日本人の美的価値観のシンボルとされた。ところが先の大戦では日本の将来を担うべき多数の若者を祖国と天皇のために「カミカゼ」に搭乗し潔く散るためのシンボルとされた悲しい歴史を持つ。「桜が散るように」、為政者は桜の美しさをナショナリズム高揚と戦争遂行に利用した。

これに関しては、大貫恵美子氏の「ねじ曲げられた桜−美意識と軍国主義」(岩波書店)に詳しく書かれている。学徒特攻隊員の日記をきめ細かに分析して、統治権力による象徴操作を解明した素晴らしい文化人学的研究である。600ページもあるかなり分厚い本であるが一読の価値はある。

とはいえ「花に憂き世の咎(とが)はあらじ」である。

この千代田区は日本の中心でありながら日本人にとって風雅の極みである桜を楽しめる多くの場所があることに感謝したい。そして来年も美しい花を咲かせてほしい。
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一気に咲き、見事な花吹雪で散っていく桜の美しさがようやくわかってきたように思えます。これは歳のせいですかね。

毎年必ず開花するのに、こんなに胸躍らせる花は桜以外にあるのでしょうか?

北海道の開花予想は4月下旬、満開は5月の正にゴールデンウィーク真中とのことです。

楽しみに花見のポイントを検索中です。私の場合、開花を期待して胸躍るのは、花より団子を期待しているのかも・・・・・。

 

H氏のHPは、麹町界隈の桜の様子が日々掲載されています。このメルマガを読みながら桜の画像をお楽しみください。

http://homer.pro.tok2.com/

 

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(大)


平成16年4月11日配信


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