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==========麹町ウぉーカー(麹町遊歩人)No.93==========

北海道新聞の毎月第3水曜日の夕刊に、「六花亭」の新聞広告がシリーズで掲載されています。「社長の思い」というタイトルで毎回違うテーマを取り上げています。

先月2月は 「パフォーマンス」というテーマでした。

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「できたてをどうぞ。」職人技を披露しながら、つくりたてのお菓子を提供する実演販売は、今や百貨店の話題づくりには欠かせないものとなっています。

 実演と聞いて真っ先に思い浮かぶのが「御座候」。

北海道では、あまり馴染みがないかもしれませんが、関西地方を中心にいつも行列ができているおやき屋さんです。売り場はガラス張り。目の前で焼かれるほかほかを求めて、お客さまは並びます。ひとつ七十円のおやきで、年間約五十億円。驚くばかりです。

 しかし、最近の実演販売の中には、その必然性に首を傾げるものもあります。東京のある百貨店では、バウムクーヘンの生地を焼き重ねていく様を実演し、できたてを切り分けてお客さまへ。確かに目を引くパフォーマンスですが、私には焼きたてを提供する必然性が理解できません。なぜなら、バウムクーヘンは、焼きあがった後、数日間熟成させたほうがおいしいのですから。パフォーマンスを重視するあまり、菓子づくりの本質を見失っているように感じます。それに比べると、地元、柳月さんのバウムクーヘンの方が、はるかにレベルが高いと思います。安易なパフォーマンスに踊らされない賢いお客さまが増えてほしいと願うばかりです。           (2005・2・16 北海道新聞夕刊より)

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六花亭の新聞広告ですよ。このコラムだけ読むと競走相手の菓子店「柳月」の宣伝?なんて思うかもしれませんね。う〜んと唸ってしまう新聞広告です。今週16日が第3水曜日です。最近、六花亭のお菓子、そんなに食べなくなりましたが、この広告だけは楽しみにしています。

さて、今週と言えば、ホワイトデイーがやってきます。チョコのお返しを贈る日だそうですが・・・・・。H氏もこの日を意識したのでしょうか?今回は「村上開新堂」のクッキーに纏わる話題です。

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麹町ウぉーカーにとって千代田区一番町の英国大使館裏にある村上開新堂のクッキーが「幻のクッキー」であることは麹町ウぉーカー40号で紹介した。そしてこの間、メルマガの読者の方やホームページをごらん頂いた多くの方から、「レストランを利用したことのある人の紹介による予約でなければ買えないこと」、「缶にぎっしり詰まっていること」等の情報を頂いた。さらに、このクッキーを会社の贈答用に使っておられるというある企業の役員秘書の方からその素晴らしさを伝えるメールをいただき、このクッキーがますます幻となっていた。

東京一番町村上開新堂ところがなんと昨年春、念願叶って村上開新堂のクッキーを頂くことができたのである。初めてこのレストランにこの当時テレビにも出演されておられた弁護士の先生に誘われて行ったときのことである。英国大国大使館のテニスコートが見下ろせる窓際の角のテーブルに案内され、食事の前に近く6代目のオーナーとなるという女性の御挨拶を頂き、名刺の交換をさせて頂いた。食事のあとにオーナーにクッキーの話をしたら「先ほど名刺をいただき登録されましたので、御予約いただいても結構ですよ。」といわれたのでお願いしたら1週間後になるということであった。

1週間後、再度訪れて、重厚な扉を開いて一階の受付に行くと、カウンターに白い袋に入れられた予約のクッキーが積み上げられていた。そしてクッキーの手提げ袋を受け取り、カウンターに置いてあったパンフレットを頂いて帰った。パンフレットは緑色をベースにしたものと薄いピンクをベースにした2種類がある。緑色のパンフレットには村上開新堂の歴史が詰まっており、ピンク色のパンフレットには開新堂の洋菓子やクッキー、ゼリーが紹介されている。これらには値段は書かれておらず別の紙に値段のみが書かれている。

初めてこのクッキーの入手した夜、家族でテーブルを囲み、67号で紹介した「ミュージアムティールーム五番町店」の紅茶「ダージリン」を入れ、包みを開きながらその中から幻のクッキーが出てくるのを待った。

「村上開新堂」と「KAISHINDOU」とストライプにデザインされた外包みを明けると紅白のリボンで結ばれ、花がデザインされたカードが添えられ、「西洋菓子 東京 開新堂」の熨斗紙がかけられている淡いピンクの缶が出てくる。

初めて入手したクッキーは横幅19センチ、縦12センチ、深さ約6センチ程の村上開新堂では一番小さな詰め合わせの缶(0号缶)であったが、持った瞬間その大きさに比して重たいことにまず驚いた。

その理由は包みを解くとすぐに理解できる。多くの種類のクッキーが缶いっぱい隙間なくぎっしりとそれも整然と詰められているのである。薄緑色の小さな水玉の形をした抹茶のメレンゲや、正方形、丸形、楕円形、クッキーの間にクリームが挟まれたものなど驚くほどの種類がある。それにしてもこれだけ大きさが異なるものを整然と詰め込んだ仕事の緻密さ繊細さにびっくりさせられる。

驚きはそれだけではない。それぞれのクッキーの硬さ、味、香りが異なり、全てが個性を持ち一つとして同じ種類のものはない。一つ食べたら次のクッキーへと手が伸び、そのシンプルな美味しさに驚きが止らなくなる。口に入れたらとろけてしまうようなメレンゲがクッキーだったことに目からうろこである。

缶のなかの隅に銀色の袋に包まれた「CITRON」と書かれたクッキーがある。中にクリームをサンドしたクッキーで独特のフルーツの香りを漂わせている。

クッキーの美味しさのバロメーターとして「バターがたっぷりのクッキー」などと表現されることがあるが、村上開新堂のクッキーを食べてみてその表現がとても陳腐であると思えた。このクッキーのバターはどちらかといえば少なめで、とてもシンプルではある。そして本当に豊かな時間を過ごすことができる美味しいクッキーであると実感した。

 

この村上開新堂の歴史は、明治3年(1870)我が国の近代化のために、宮内省大膳所(お食事係)に勤めていた村上光保氏が横津田塾大学発祥の地のプレート浜外人居留地に派遣され、3年間、フランス人サミュエル・ペール氏からフランス菓子を学ぶことに始まるという。その後大膳職に復職し明治7年(1874)に、麹町山元町(麹町大通りから平河町側に一本通りを超えたところが山元町である。)で村上開新堂を創業し、日本人の舌に合う味作りを目指してきた。そして、昭和40年(1965)、麹町から現在の場所へ移り、3代目が得意としていた料理をもとに、フランス料理のレストランを開設した(千代田区一番町27)。この辺りが明治33年(1900年)津田梅子により津田塾大学の前身「女子英学塾」の設けられた場所である(開新堂ビルの壁に「Tsuda College Founded Here in 1900」というプレートがはめ込まれている)。

英国大使館の裏にあるレストランの2階の壁は漆塗りを連想させる黒で統一され、天井にはロウソクの形をしたシャンデリア風のランプがかかっている。その壁に開新堂が麹町元町にあった当時の写真があった。その写真には左側の看板には「KAISINNDOU MURAKAMI」とか書かれて、右隣の看板には「KAISINNDOU  TEA―SALOON」と書かれており、店の前にある大八車の後ろに「アイスクリーム」のメニューが写っている。店のスッタフに訊くと約100年前、明治時代の中期辺りの写真だということであるが、まるで古い映画で観る外国の街並みのような店の写真である。この麹町界隈が如何に裕福で時代の先端をいっていたかが伺える一枚である。ここに掛かっている写真と同じものが「目で見る千代田区の歴史」(1993年版 千田区教育委員会発行)の105ページに紹介されている。

 

この後、何度かここのクッキーを入手したが、あるときは夫婦でゆっくりとお気にクッキーの缶の中身入りのアウトドアフィールドで楽しむことにした。すがすがしい日差しの差し込む明るい高い木立の中にテーブルをセットし、テーブルクロスを掛け、登山用のバーナーでお湯を沸かし、コーヒーを入れ、クッキーの缶を開き、先に紹介したパンフレットの写真と名前を一つ一つ確認しなながら食べてみた。一つとして同じ味、硬さ、風合いのものがなく、すがすがしい緑の風の中、贅沢な時間を楽しむことができた。パンフレットによると缶の中に詰められているクッキーは27種類あるらしい。

「ココアメレンゲ、アーモンドマカロン、ビスキェイベリージャム、ココア、抹茶メレンゲ、バニラ&チョコレート、カラントロール、カレーサブレ、チョコレートクリーム、ジェノワーズラスク、チーズ、ピーナッツサブレ、ピーナッツバター、荒挽ピーナッツ、モカクッキーモカクリーム、プレーン/杏ジャム、ローストナッツ、シナモン&フェンネルベリーシャム、シトロンクリーム、ナツメグ&シナモン、モカサブレ、チョコレートサブレ、ジンジャー、カラントクッキー杏ジャム、チョコレートヴァニラクリーム、ミルククッキー杏ジャム、ヴァニラクリーム」

これだけのクッキーであるから予約して約1週間ほどしないと入手できないことはこの缶を開けて初めて理解できる。賞味期間は約3ヶ月と比較的長く設定されている。

ちなみにクッキーの値段は一番小さな5500円の0号、7950円の1号、そして22220円の5号まで6種類がある。そのほかにも洋菓子詰め合わせ、ゼリーなどもある。

 

今回はクッキーの紹介にとどめ2階にあるレストランの食事の詳細についてはいずれ紹介することにする。しかし、ここが都心かと思わせるような一番町の英国大使館の裏手を望む静かな空間であり、料理は口に運んだ瞬間、その温かさ・美味しさにはっとさせられてしまう、他では体験したことのないとても心のこもった料理であった。さらにスタッフサービスも完璧で、ソムリエに選んでいただいたワインもとても美味しかったことが忘れられない。開新堂のクッキー

 

最後に、ここに記すべきかどうか躊躇したが、先日、関西に住む友人から届いた報告を紹介しよう。

京都市中京区寺町に創業明治37年、京都最古の洋菓子屋といわれる同じ名称の「有限会社村上開新堂」がある。京都に住んだ人であれば良く知られている店である。私が初めて村上開新堂のクッキーを麹町ウぉーカーで紹介した後、関西に住む友人から京都にも同じ名前の店が在ると聞かされ興味を持っていた。そこでこのレポートを書くに当たって京都の村上開新堂を取材して欲しいとお願いしたところ、想像もしなかったメールが届いた。京都で「東京の村上開新堂の話しをすることは禁句らしい。」と言う内容であった。それ以上のことは不明であるが、このメルマガでは、ここまでとしておく。

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東京の村上開新堂のHPです

http://www.kaishindo.co.jp/

 

H氏のHPでメルマガ40号また読んでみてください。他にもクッキーのお店が掲載されていますよ。

http://homer.pro.tok2.com/index.htm

 

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http://www.mag2.com/m/0000073086.htm

(大)

 

 

平成17年3月13日配信


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