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野間エクスカレーション(C3Ar-1)
Noma excursion (C3Ar-1)

(地磁気変動の痕跡の残る場所)

 2019年2月15日の南日本新聞に亀ヶ丘とその下の海岸線の岩石に地磁気変動(エクスカーテーション)の記録の残る貴重な場所であるとの報道がありました。その記事をこのホームページの亀ヶ丘のところに紹介したところ、これを発見した神戸大学の乙藤洋一郎先生よりメールをいただきこの亀ヶ丘周辺の地層と岩石の中に地球の磁場が過去に逆転した証拠が残ることを著名な学会誌「Geophysical Journal Internationalに発表した論文をお送りい頂きました。
新聞では亀ヶ丘では「野間エクスカレーション」と呼ばれると書いてあったが、正確にはこの事象が学名Noma excursion (C3Ar-1)(野間エクスカーテーション)と命名されたということである。我々の故郷が学名になるという光栄な論文であり地球物理学には門外漢ではあるが時間を見つけて翻訳してみた。全体を紹介することは検証方法等難解すぎて不可能であるがサマリーのみ紹介します。
ただ、地場の逆転とはいっても現在、北(N)と南(S)の磁場が逆転しているわけではなく山頂と海岸線の岩石に古の磁場逆転の痕跡が残されているという意味でこれを学術的に野間エクスカレーション(C3AR-1)と命名されというものです。excursionは変動・動き回るということから普通は「遠足」とも翻訳され磁場が小遠足をしていると比喩されますが磁場の偏り「偏移」という意味だと理解した方がいいと思います。 
乙藤洋一郎先生たちの努力に敬意を表するとともにお送り頂いたことに心より感謝申し上げます。
さらに、これを南さつま市の大きな財産として伝えていきたいと考えております。

2019215日の南日本新聞によると神戸大学名誉教授の乙藤洋一郎さんの研究チームが約10年前に発見した中新世紀(約2300万年から530万年前)後期について研究の結果、亀ヶ丘(標高386メートル)は約670万年前の噴火による玄武岩、安山岩の溶岩層で形成されており、山頂部と海岸部では現在と逆の磁気(N極とS極が逆)を示す一方、中腹では現在と同じ磁極を示し溶岩層に地球磁気が逆転しそこなった記録が残るとのこと。 地磁気エクスカーション(磁場変動)という現象が地上の溶岩層に記録されているのは世界的に珍しく、亀ケ丘では「野間エクスカーション」と呼ばれるとのこと。

20万年前、日本列島ががアジア大陸から分離する時代のデータを調べた際、亀ヶ丘の岩石が不思議な地磁気を示すことが分かり溶岩層から岩石を採取し検証したという。

77万年前の地球の磁場はN・S極が現在と逆転しており過去360万年の間に少なくとも11回逆転したとされる。磁場が完全に逆転した記録は千葉県市原市の古い地層に残っており「チバニアン」(千葉時代)として知られているとある。2019215日の南日本新聞

Geophysical Journal Internationalに発表された亀ヶ丘周辺で発見された磁場変動に関する14ページに及ぶ論文。

Recognition of ‘cryptochron’ in the polarity subchron C3Ar:

Palaeomagnetic results of the Late Miocene lava sequence from Noma Peninsula (Kyushu Island), Japan

「極性サブクロンC3Arにおける「クリプトクロン」の認識:中新世後期の溶岩シーケンスの古地磁気結果野間半島(九州)日本
論文の構成は以下の通り

1はじめに
2地質設定およびサンプリング
3 K-ARデータ
4岩石の磁気
5古磁気診断
5.1検査方法
5. 2デモンストレーション
5.3方向の振る舞い
5.4仮想地磁気極
6.1サブクロンC3Arでの小旅行(偏移)
6.2中新世後期のエクスカーション
6.3 野間エクスカーション中の過渡磁化方向
7結論
謝辞

 

概要
この研究は、九州、野間半島、亀ヶ丘山の安山岩質溶岩シーケンスで新たに発見された地磁気エクスカーションを示しています。山頂から海岸までの範囲をカバーする、13の連続した溶岩流から約170の指向性のサンプルが集められました。この新たに発見された、野間エクスカーションC3Ar-1)と名付けられた。・・・・・調査された溶岩シーケンスについて推定された仮想地磁気極は、 南極大陸からカムチャッカ半島に移動し、ニューギニア赤道地域に戻って再び南極大陸への道をたどった。

論文に掲載された野間半島の地図と亀ヶ丘

Miocene Nansatsu Group(新中世南薩グループ)
落水と平崎の港の海岸のエクスカーションの痕跡の残る地層

Bが平崎港
Cが落水
これがサンプリングの場所の地図
北緯31度20分
東経130度12分辺り

秋目の港
亀ヶ丘
落水
平崎港

volcaniclastic rock 火砕岩

Lava Flows火山流

Dike 道路の壁

 各観測地点のデータ
上の写真の平崎港のNM42地点などが詳細に位置や標高その他の偏移データが記載されている。
 調査された溶岩シーケンスについて推定された仮想地磁気極は、
南極大陸からカムチャッカ半島に移動し、ニューギニア赤道地域に戻って再び南極大陸への道をたどった。

結論

南薩山群(野間半島、日本)から得られた古地磁気方位の研究は、中新世逆極性年代における新たに発見された地磁気エクスカーションを明らかにする。・・この新しく発見されたイベントは、調査された場所にちなんで命名された野間エクスカーションとして認識されます。・・・

 もう一通送られてきた論文。
地球の物理と惑星の内部
中新世後期の野間エクスカーションにおける低絶対地球の磁場」?

こちらはまだ翻訳できていませんが。乙藤先生のメールによると磁場変動があった時代には現在の磁場の8%程度まで弱くなっていたという論文だそうです。
 左に論文右に翻訳を行うとA4で30ページにもなりました。
学術用語はどうしても理解できないため分かり易くするために意味を私なりに理解して赤く加筆していった。
正面の久志平崎の港とこの下が落水の海岸
亀ヶ丘の山頂部と海岸線では現在と逆の磁場を示した岩石の層がある。
 亀ヶ丘の岩場
右下に平崎とその奥に久志湾

岩場の奥には陣が岳が見える。
 亀ヶ丘の巨岩

この岩の下の林道の露頭している岩石は今と同じ磁場を示すという。
 平崎の港
向かいの丘が亀ヶ丘
 南日本新聞でサンプルを採集している場所
 平崎の海岸の地層

論文Bの写真の場所
 論文Cの写真の落水の海岸の地層

【余禄】
野間エクスカレーションをHPで紹介した直後、神戸大学の乙藤洋一郎先生よりメールを頂きお礼のメールをしたのですがまたまた驚きの返信メールが参りました。
それは、平成30年
11月の有楽町での加世田高校関東同窓会の飲み会で元JAXAで活躍されたプラズマや宇宙の磁場の研究の第一人者小山孝一郎先生と一緒になりました。なんと小山先生の生まれた場所は私と同じ久志であるとのこと。12月に高尾山ハイキングのガイドをしたときに伺った話で自然科学の素晴らしさを実感しました。
そこで地球の古い磁場の研究をしている乙藤先生に同郷であり先輩であ宇宙の磁場を研究している小山先生のことを書き加えましたら・・
なんと「同じ学会である地球電磁気学会(
SGEPPS)に属しています。彼は、超高層や飛翔体部門です。一方乙藤は地球内部あるいは古地磁気部門に所属しています。部門は違いますが、1980年代後半に同学会の運営委員を一緒に行っていたため宜しく伝えてほしい」とのこと。人の縁とはすばらしいものですね。
それに頂いた二つの論文の
2つ目は「野間エクスカーションの間、地球磁場強度は現在の8%くらいまで低下したことを示した論文」でした。


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