朝6時20分に菅平牧場の登山口前にある駐車場に着き身支度を整え、手がとても冷たく感じる高原の空気の中、四阿山に向けて出発する。
四阿岳へのコースは牧場のトイレの前にある牧場を上下に分断する真西にまっすぐに伸びる道を数分歩き牧場の柵の切れ目に「四阿山登山口」というゲートがある。
ゲートを入り牧場の柵に沿って笹の生えたなだらかな登山道を登り、少し沢にくだり、木でできた橋を渡るとそこから少し厳しい登りになる。
しかし全体的にはダケカンバと笹の緩やかな登山道には淡青紫色の「マツムシソウ」が咲き、展望は利かないものの明るくてとても楽しい登山道である。
このマツムシソウはなかその形状を形容しがたい、見かけたことのない花である。花は長い柄の先端に多くの花が集まった花の塊があり、周りに外側に長く伸びてそしていくつに割れた花弁が風に揺れている。
1時間ほど登ると突然背後に北アルプスが見あてくる。
そしてそれから先はマツムシソウとリンドウが咲き展望の利く尾根道をぐんぐん登る。背後の北アルプスが雲海の上にそのシャープなスカイラインを増してくる。
尾根に出て「バボス牧場1.7キロ 四阿山2.8キロ」と書かれた標識のある尾根に来ると西側に根子岳の山頂東面は直下の崩落した厳しい壁面を見せているが左右の稜線はとてもたおやかで緩やかな笹の尾根が美しい。
そしてしばらく登る「中四阿」の少し手前に、北アルプスの全貌と八ヶ岳、浅間山が展望できる場所に出る。そこで先に着いていた男性と後から来た夫婦のパーティーと展望を楽しみながら山座同定を行なった。山は早朝の凛とした空気の中でこそ、その美しさを実感できるものである。
根子岳の脇に妙高山、火打岳、焼岳から南に、白馬岳、鹿島槍ヶ岳、そしてその奥に剣山、そして中間の部分が同定できなかったが天を突くように聳える槍ヶ岳、北穂高、奥穂高、そして雲の中にポツンと乗鞍岳、御岳、木曾駒ヶ岳・・北アルプスの全てがある。
そして南西には蓼科山・・八ヶ岳の横岳・・そしてすぐ隣ある浅間山・・そして浅間山の右隣に富士山がポツンと山頂を覗かせている。
こ れほどの展望は初めてである。何より四阿山が北アルプスの展望の山であることを実感する。
そこから少し登ると中四阿である。中四阿は岩の小ピークでありその東側をトラバースする。中四阿を過ぎると少し下り、崩落地の鞍部を過ぎると少し登り返す。しかしこれからの登山道は笹の中をこぐように登るところが増えてくる。
そして根子岳と四阿山との分岐点を過ぎるとしばらく登るが、正面に四阿山が見えてくると一度下って再度登り返すと植生再生のために付けられたこの階段を登りきるとすぐに山頂である。
山頂(2354m)にはいくつもの祠がある。四阿山はこの辺りではさえぎる山のない独立峰であるため360度のパノラマが楽しめる。北アルプスや八ヶ岳のほか北には志賀高原の山並みが望める。
そして十分に山頂を楽しんだあと根子岳に向って下山を始める。
分岐点をたって急斜面を下り始めるとそれから先はとても急な笹と木立の下山道で苦労をする。根子岳から四阿山への逆コースの登り返しの登山者がとても大変そうである。最後の鞍部の近くは笹がとても深くて笹薮をこいで進むという様相であった。
下りきると根子岳と四阿山との最低鞍部から先は一転してのびやかな笹原の草原状となり根子岳への登りに取り付く。うすい水色のマツムシソウと紫のリンドウが登山道を彩り、苦しい登りを楽しませてくれる。途中に3つの岩場がありそれを目印にして登る。最後の岩場はとても大きな岩場で大きな岩の上に寝そべっている登山者がいた。しかしこの岩場は岩を直接つないで登ることは出来ず、岩の北面をトラバースするように根子岳の山頂を目指す。たおやかな根子岳でアルプス的なスリリングな岩場を体験させてくれる。そしてとても広い根子岳山頂(2207m)には祠と共に小さな鐘が下げられている。一休みした後、牧場に向って真っ直ぐに下り始める。ひたすら真っ直ぐである。少しして牧場建物が見えてきたらもうすぐ牧場の登山口に着く。牧場の柵のそばまで牛が寄ってきて草を食べているが、それがとても毛並みがよく、急な斜面をとても元気そうに走り回っているのが他の牧場とは 様相が異なる。牛が牧場を走る様子はあまり見たことがなくとても新鮮であった。
この四阿山と根子岳はいろんな季節に来て楽しめるとても素晴らしい山である。今度は雪を頂いた山に登りたいと思った。
そして真田温泉に入り軽井沢に立ち寄り埼玉の自宅に帰った。 |