両神山荘の下にあるバス停の脇の駐車場に車を止め、山荘の玄関前においてある小さな手提げ金庫に500円の駐車料金を入れ、そのわきにある両神山荘が作った「両神山全図」という地図を頂いて出発した。
標高は670mほどの日向大谷から標高約1300mの清滝小屋まで2時間、標高1723mの両神山山頂まで3時間のルートタイムである(標高差約1100m)。
両神山荘の前から季節外れの桜の花の咲いた日当たりのいい急傾斜地の野畑の中を横切り、木の橋を越えて登山道に入るとすぐに鳥居とお堂がある。この山は信仰の山であり、これからの山道いたるところに仏像や供養塔がいたるところに見られる。
なだらかな山道を少し歩くと小さなクサリ場があり、ここはもみじの木が多くて紅葉のとてもきれいな場所である。このクサリ場の少し先が会所までのルートの中で一番標高の高い場所でこれから会所まで幾分下る登山道になる。このルートは特に危険な場所は無いがそれでも渓谷のかなり高い場所に狭い道が付けられており、滑落事故があったのか花束が手向けられた場所があった。そして出発て約30分ほどで七滝沢ルートとの分岐点にでる。その標柱の下が「会所」と呼ばれる場所で休憩するためのテーブルの置かれた広場がある。とても綺麗な沢で小さい滝もある。沢にかかる木の橋を渡り、深い渓谷の左岸のかなり高い斜面に付けられた細い登山道を少し歩くと沢に下り、正面に大きな岩山が見えてくる。ここまでの登山道はとても日当たりがよく明るいなだらかな道である。
岩山の前の沢を渡り沢の右岸の登山道に入ると急坂になる。よく見るとこの岩山は3つの尖った岩山がまるで漢字の「山」の形のように並んでいる。これが地図上「八海山」と呼ばれるも山の様である。右岸の急な登山道の対岸に岩山を見ながら登り、幾度か沢を左右に越えて、右岸になり傾斜が緩やかになり、沢の巾が狭くなると八海山という標柱が見えてくる。日向大谷へ3.1キロ、清滝小屋へ0.8キロ、両神山山頂へ2.6キロと書かれている。(ここまではとても雄大で綺麗な渓谷であり登りも下りも渓谷美と紅葉を楽しみながら歩ける場所である。)

それからまた急な登りが始まる。とても明るい登山道で10数分で登山道の脇にポツンと「白藤の滝」の案内標識がある。往復で15分ほどでいけると書いてある。そこから10分ほど歩くと「弘法の井戸」とよばれる水場がある。それから少し登ると清滝小屋が見えてくる。清滝小屋はログハウス風のお洒落な山小屋である。日向大谷を出発して約4キロの地点である。ここで山頂での食事用の水を頂いた。
清滝小屋の裏から両神山への登山道が始まる。急な山道をジグザグに登ると七滝沢ルートとの分岐点に出て、その鈴ヶ坂と呼ばれる坂を10分も登ると産泰尾根に出た。ここに出て初めて両神山が見えてくる。小屋を出て約400メートル、両神山山頂まで1.4キロの地点である。
細尾根を登り始めるとすぐにクサリ場が出てくる。この山のクサリ場は他の山のように岩場をクサリが張られているのと異なり、急な岩山に生える木々の根元にクサリやロープが張られており、木の根と泥の間を登るという感じである。
最後のクサリ場を登り終えて尾根道を登ると小さな社のある「横岩」と呼ばれる大きな岩の間を過ぎるとじきに両神神社の鳥居が見えてくる。鳥居の脇には普通の神社の狛犬と異なり狼の狛犬である。両神神社の本社はとても質素な社である。神社の左側の登山道を進むとすぐにもう一つの神社がある。社殿も狛犬も竜の彫り物も両神神社より立派である。こちらの神社は地権者との関係で廃道になっている白井差(しらいざす)口の薄(すすき)にある御岳神社の奥社である。
神社から5分ほどなだらかな道を歩くと正面に両神山の山頂が見える場所に出る。山頂は抜けるような青空を背景に枯れた木が数本立ち電柱 でも立っているかのように見える。
それから吊尾根を少し下るが、尾根の東面に付けられた細い登山道は途中で一ヶ所崩落して危険な場所がある。そして10mほど水平に鎖が付けられた場所もあるがクサリに頼るほどの場所でもない。クサリ場を過ぎて急な登山道を登り尾根道に出ると山頂の直下である。いくつか岩場を登ると正面に真っ白に輝く岩の山頂が見える。山頂の西面にクサリがつけられておりそれを登りきると山頂である。
山頂の中央の少しだけ盛り上がった岩の上の枯れた木に「両神山1723メートル」と書かれたプレートがあり、その下に白い小さな祠がある。山 頂はとても狭く20人もいるとかなり窮屈である。
この日は快晴で360度のパノラマで、雪を頂いた木曾駒ヶ岳、北アルプスに浅間山、八ヶ岳に雲取山そしてその奥に白く輝く富士山までくっきりと見えていた。
山頂にいる登山者や下山してくる登山者の口々に「こんなに快晴の素晴らしい山頂は初めて」と言っていた。
十分に山頂を楽しんだ後、渓谷の紅葉の美しさを楽しみながら日向大谷に向かって下山した。下山は2時間15分ほどであった。(1982年に霧島高千穂に登って以来のソロであった)
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