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==========麹町ウぉーカーNO27の付録版==========

ごぉ〜ぉ〜ぉ〜ぉ〜ん。

草木も眠る「うしみつ時」鶴屋南北作、河竹繁俊校訂「東海道四谷怪談」(岩波文庫)

重〜いお寺の鐘の音が・・・・・。       

お届けします、東海道四谷怪談

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【前段】

城内松の廊下の高師直(忠臣蔵の吉良)に対する刃傷事件を起こし切腹させられた

塩冶判官(忠臣蔵での浅野匠の守)の旧家臣で浪人となっている四谷左門には

二人の娘がいた。

姉のお岩は民谷伊右衛門という、塩谷浪人の女房になっていた。

ところがお岩の父親四谷左門は、夫の伊右衛門が塩谷家取り潰しの前に

城内の金員を盗んでその罪を同僚になすりつけた張本人であることを知り

お岩を家に連れ戻している。

また妹のお袖も塩冶家浪人佐藤与茂七と夫婦(許婚)なのだが、今は離れ離れに

なっていた。

 

「浅草境内」「地獄宿」

お岩の実家四谷家は父左門の稼ぎも無く、お岩も身ごもって仕事ができず、

妹のお袖は、昼は浅草の境内の楊枝屋で働き、

夜になると目あきの按摩の宅悦がやっている地獄宿(いわゆる売春宿)で、「おもん」という名で客をとっていた。

浅草寺の境内には高師直を主君塩冶判官の仇と狙う浪人奥田庄三郎

が薦被り面樋(めんつう)という飯を盛るこじきの持つ道具を傍らにおいて

敵の動向をうかがっている。

そのとき高師直の家老伊藤喜兵衛が、孫のお梅の恋煩いの気晴らしに

乳母お槙(まき)とお抱え医師尾扇(びせん)を連れて浅草寺を訪ねる。

ここで喜兵衛はたまたま通りかかった、お岩の夫民谷伊右衛門を見つめる

お梅のそぶりを見て恋患いの原因が伊右衛門であることを悟った。

仇打ちを企む庄三郎は乞食の身なりで喜兵衛に

高師直の隠居先が「鎌倉花水橋の向こう岸、かつしか郡」であると聞き出す。

庄三郎は、伊藤喜兵衛の尾扇に面通(お金を入れてもらう碗)に入れた小銭をポイと捨てたのを見られ、さらに討ち入り事が書かれた書面(廻状)見られてしまい、塩冶の旧家臣が高師直の動向を探っていることがばれそうになる。

そこに与茂七が通りかかり機転良く庄三郎の危機を救う。

その後、喜兵衛一行は土産に楊枝(現在の歯磨きと思えばいいであろう)を買おうと

お袖の店に行くが高師直の家臣には売らないと拒絶する。

浅草に遊びにきていた元塩冶の家臣奥田家の小者直助という男がお袖に岡ぼれし、お袖に迫ろうと地獄宿を訪れていた。

ところがその夜お袖の許婚の与茂七が地獄宿に遊びに来て

お袖(おもん)が相手をする。

部屋に寝具がひかれそこに与茂七とお袖は向かい合うが、行灯(あんどん)を屏風の後ろにおいて暗くしてあるためお互いに気づかない。

お袖は与茂七に浪人の父と離縁して戻っている姉のため、心無くもこのような秘めた仕事をしている。

不憫と思って一つ寝をすることは許してくれと懇願するが、遊び人の与茂七は許してくれない。

与茂七が無理やりお袖を引き寄せようとしてお袖が飛びのいたはずみに屏風が倒れて明るくなり両人顔を見合わせ「そちらは女房・・」、「おまえは与茂七さん・・」とお互いに気づき、ののしり合いのあと、与茂七は自分の女房に揚げ代を払って買うことになる。(許婚のことを夫婦と見ていたようである。)

二人のいざこざが一段落して与茂七とお袖の濡れ場がまさに始まろうとするとき、

直助が飛び込んできて二人にからむ。

実は宅悦がこの夜お袖を二人に売っていた。

直助は、お袖を夫の与茂七に横合いからかっさらわれた格好になって腹の虫がおさまらない。

そこで二人は直助をあとに「藪の内」と書かれた提灯をさして出て行く。

この後、与茂七は先に分かれた庄三郎と会い、皆が慎重に高師直の動向を探っているときに不用意に素性がばれるようなことをするなとたしなめる。

そして、庄三郎と与茂七は敵である高家の家臣にばれないように衣類を取り替え、

庄三郎は入手した隠居先の情報を山科の大星由良助(大石蔵之助)に知らせるために、「藪の内」の提灯を片手に暗闇に消える。

 

「浅草裏田圃」

一方、お岩の夫伊右衛門は、女房と復縁したくても、父の左門に過去の悪事を知られているから、その存在が煙ったくてならない。

乞食をしていた四谷左門は勝手に他人の縄張り仕事をしたとして数人の乞食に袋叩きにあうが、これを伊右衛門が小銭を出して助ける。婿と舅に当たる伊右衛門と左門は、浅草寺裏の真っ暗闇の田圃道でお岩と復縁させてくれと願う伊右衛門に藩の公金を盗むような下賎の者にはお岩はやれぬと口論になり伊右衛門は舅の左門を切り殺す。

ちょうどその時、直助はすぐ傍の田圃道で「藪の内」と書かれた与茂七の提灯を目当てに出刃包丁で「今宵の意趣覚えたか!」と刺し殺し、あげくに身元がわからないように死人の面の皮を剥ぐ。その時、伊右衛門も血まみれの左門を追いかけてきてとどめを刺す。

このふたり、もともと塩冶の家臣旧知の間柄、お互いの悪行を知ることになる。伊右衛門は直助の入れ知恵で左門の顔の皮をはがそうとする。ところが、その直前に父を探すお岩と、与茂七を追うお袖がやってくる。

見れば、あたり一面が血の海で、父親の左門と顔を剥がれて面体は分からないが与茂七が事切れている。

思いもかけない惨事に気も動転する姉妹の前に、さも今駆けつけましたという顔をして伊右衛門と直助があらわれる。

お岩は父左門の仇を打つため心ならずも伊右衛門とよりを戻し、直助はお袖と仮の夫婦になってともに仇を討ってやろうと約束する。

 

「浪宅」〜「伊藤家」〜「浪宅」

伊右衛門の元へ戻ったお岩だったが、産後の肥立ちが悪く病の床に臥していた。

伊右衛門はそんな女房が煩わしく、生まれた我が子も疎ましく、日増しに冷たくなっていく。

それでも、父の仇を討ってもらいたくて、お岩はじっと我慢していた。

そのような伊右衛門の浪人宅はお岩は床に臥しがちで働けないため、按摩の宅悦の口入で雇った小者の小平がその日のうちに民谷家伝来の秘薬を盗んで逃げる。

ところが小平はその日のうちに捕らえられて連れ戻され、指を折られ、びんの毛をむしられる等のリンチを受けていた。

そこへ、隣の伊藤家から乳母のお槙(まき)がやってきたため、小平をす巻きにして、納戸に放り込んだ。乳母のお槙は、酒樽と煮しめの他に、誕生祝いとして赤ん坊には小袖を、お岩には伊藤家伝来の血の道の妙薬をくれた。

これに対して伊東家は塩冶の仇高師直の家老の家柄であり、塩冶の浪人である伊右衛門が挨拶に行くのもはばかられると、躊躇する。

ところが、お岩にせかされてお礼を言いに伊藤家に出かけた伊右衛門に、主の喜兵衛は大金を差し出し、娘お弓の子(孫)お梅の婿になってくれと言い出す。とはいえ如何に伊右衛門といえ妻のある身、その申し出を断る。そこで喜兵衛は先刻届けさせた薬は、実は顔を崩れさせる毒薬で、お岩が醜くなれば別れてくれるだろうと企んだこと、と白状する。もし承知してくれないのであれば、皆、殺してくれという。伊右衛門は、お岩が疎ましくなっていたところでもあり、ついでに高家に仕官できるのなら、それも悪くなかろうと伊右衛門は承知する。そして、その夜に祝言を行うことになる。

 

家に帰ってみると、喜兵衛が言ったとおり、お岩の顔が醜く変わっていた。

お岩を見た途端、邪険になる伊右衛門。婿支度に金がいるからと、お岩の身ぐるみを剥いで、赤ん坊の蚊帳まで持って行ってしまう。

子供が蚊に刺されると追いすがるが、蚊帳にお岩の血のついた爪が剥がれてつく。お岩と伊右衛門

その上、小者の小平の口利きをした按摩の宅悦に金を渡し、お岩に間男を仕掛けてくれと頼む。

仕方なくお岩を口説こうとした宅悦だったが、拒絶され「実は・・・」と伊右衛門から聞かされた血の道の薬のことや婿入りなど一切を打ち明ける。

怒ったお岩は伊藤家に怒鳴り込もうと身だしなみを整えるため、産後の禁忌とされていた鉄漿(おはぐろ)と櫛を使おうとする。お岩はわが身に何かあったら母の形見べっ甲の櫛は妹お袖にわたるように願いながら髪を梳けば大量の毛が抜け落ちる。鏡をのぞけば美しかったお岩の顔はただれ額は腫れ上がり、髪の毛の抜けたところから血がしたたり落ちる。

びっくりして止めようとする宅悦ともみ合ううち、はずみで小平の刀で喉を突き刺して死んでしまう。

そこに外から猫が入ってきて衝立の後ろに入るが、そこに大きな鼠(ネズミ)が現れて猫を食い殺して消える。

そこへ帰ってきた伊右衛門は、これ幸いと、納戸に押し込めておいた小平を口封じのため女房の仇として殺し、お岩と小平を不義に見せかけ戸板の表裏に打ち付けて筵(むしろ)をかけて川に流す。小平を杉戸に打ちつけたとき小平のすべての指がヘビに変わる。

 

一騒動がすんだその夜、喜兵衛らに付き添われて、お梅が嫁入りしてくる。

いよいよ床入り。しかし、伊右衛門が花嫁のお梅を抱き寄せると、そこにいたのは死んだはずのお岩。あわてて刀をとり首を討つと、落ちた首は実はお梅だった。あわてて隣の間に寝ていた喜兵衛を起こしに行くと、今度は喜兵衛の顔が小平の顔になり、抱いた赤子を食い殺して口は血だらけ。小平が伊右衛門の顔を見て「旦那様薬をくだされ・・」と。驚いて首を打ち落とせばそれは実は喜兵衛の首だった。

 

「隠亡堀」

この事件がもとで伊藤家は取りつぶされた。

残された喜兵衛の娘お弓は乳母のお槙とともに隠亡堀(死人の埋葬などを仕事としていた差別集落)で非人の暮らしをしていた。

乳母のお槙はお梅の持っていたお守りがお岩の化身の鼠さらわれ導かれるようにして、あやまって堀にはまって死んでしまう。お岩のたたりである。(お岩子年生まれでありいろんな形でネズミが現れる。 

その後で、やってきたのは、今は権兵衛と名を変えて鰻掻きをしている直助。

鰻のかわりにかかった、べっ甲の櫛(実はお岩の母の形見)を懐に家に帰る。卒塔婆

そこへ、伊右衛門が母親のお熊と連れ立ちやってくる。昔もらった高師直のお墨付きがあるとはいえ、今の状態では仕官もならないため、伊右衛門はすでに死んだものと見せかけようと卒塔婆を立てに来た。

川のそばに建つ伊右衛門の卒塔婆を見つけお弓は憎き仇が死んでしまったと嘆き悲しむ。そのお弓を見た伊右衛門は、この女を生かしておいては自分が喜兵衛、お梅殺しの下手人であることがお上にばれると慮り、お弓を掘に蹴り落として殺してしまう。

これで伊藤家は残らず滅びたことになる。

川で釣りをしていた伊右衛門が日も暮れて帰ろうとしたところに見覚えのある戸板が流れてくる。

杉板お岩かけられた筵をはがせばそこにはお岩の死骸。驚いた伊右衛門がぎょっとして「お岩、これ女房、許してくれろ。往生しろよ。」。お岩は伊右衛門をにらみながら「うらめしい伊右衛門殿。民谷、伊藤家の血筋絶やさん。」と恨めしい口をきく。

戸板を裏返すと今度はそこには小平の死骸。「ご主人様、薬をくだされ・・」恨めしそうに睨む。驚いて切りつけるとたちまち骨になって落ちた。

(小平の元の主の小汐田又之丞は腰が悪く討ち入りを断念しかけたが、幽霊となって現れた小平が小平の息子次郎吉に乗り移り、思いのたけを主人に伝え、又之丞はこの薬を飲んで全快し、討ち入りに参加できる。)

この後、暗闇の中で伊右衛門、直助(権兵衛)、与茂七の三人は、与茂七が庄三郎から預かった廻文状を無言で奪い合い、直助に奪われる。そして、直助が落とした鰻捕りの魚篭(びく)が突然人の顔に変わり三人驚き闇に消える。そのとき与茂七は暗闇の中で直七の持っていた権兵衛と名前の入った鰻とりの棒をひろう。

 

「深川三角屋敷」

一方、お袖は、直助に身体は許さねどもともに暮らし、法乗院の門前で供養花売りを生業とし、合間に洗濯を小商いにしていた。

裏の法乗院に、戸板に打ち付けられた男女の死骸が運びこまれたとの噂話がでる。

お袖のところに持ち込まれた着物は、どうやらその男女が着ていたものらしい。お袖は、それが姉お岩の着物に似ていると思い胸騒ぎを覚える。

直助が隠亡堀で拾った櫛を姉の櫛に似ているから止めてくれというお袖の願いも聞かず、金にかえるため出かけようとしたら、女の着物を浸けた盥(たらい)の中から手がにゅうと出て直助の足首をつかむ。直助もこれにはびっくりして盥の中に櫛を落としてしまう。お袖が、盥の中を探り、着物を絞ると水が血汐に変わりしたたり落ちる。直助がもう一度落ちた櫛を受け取り外に出ようとしたらもう一度女の手が出てきて驚いて落とすと、それを鼠が現れくわえて仏壇の上に運んでいく。

気味が悪いが、姉の身に何かあったのではと案じるお袖。そこへ按摩の宅悦がやってきて、お岩の櫛に目を止め、事件の話をする。

姉の身にとんでもないとこが起きていたことを知り驚くお袖に、直助は、父親、与茂七、お岩の三人の仇が女手ひとりで討てるのかと水を向ける。

こうなったらお袖は直助に親と姉、夫の敵討ちの加勢してもらわねばならず守ってきた操を捨てる。

その夜の寝静まった頃、与茂七が直助に奪われた討ち入り回文状を取り返しに尋ねてくる。回文状を暗闇で奪い合ったので与茂七と直助はお互いそのことを知らない。与茂七は現場に落ちていた鰻とりの棒を頼りに権兵衛(直助)を訪ねてきた。

そのとき、家の外に干していたお岩と小平の着物に心火がまとわりつき与茂七に直助とお袖の家を教える。

与茂七を見て驚くのはお袖より直助。自分が殺した与茂七が現れて幽霊が出たと狼狽する。

(実は与茂七と庄三郎は浅草寺境内での見張りのために服装を取り替えて交代していた。浅草寺裏の田圃道で藪ノ内という提灯を目印に切りつけられたのは奥田庄三郎だったのである。)

お袖は我が身の因果を嘆き、わざとふたりの夫に屏風の裏を一突きして相手を殺すようにそそのかし、お袖自身が刺されて命を捨てる覚悟を決める。ところが、お袖が持っていた実の親の形見の品というのを見てびっくりする。なんと、お袖は血を分けた直助の実の妹だった。

直助は元の主家である奥田庄三郎を殺害したうえに、実の妹と契ったとあってはもはや犬畜生にももとると自害して果てる。

「夢」〜「蛇山庵室」

(幕に「心」と書かれており伊右衛門の夢の場面であることを知らせる。)

高師直に仕えた伊右衛門は鷹狩について行く。放たれた鷹が蛍が乱舞する野中の一軒家に迷い込み、伊右衛門が取りに入る。

そこに美しいお岩がいた。伊右衛門はそれがお岩とは気づかない。お岩の美しさに魅かれてお岩を抱くが、実はそれは化け物で障子の間から覗いていたお供の長兵衛は化け物を抱いている伊右衛門を見て驚き逃げ出す。

夢の中で別れ際に、伊右衛門がお岩に似ていると思うと顔が醜いお岩の顔に変わり、「恨めしいぞえ、伊右衛門殿・・」と。驚いて床から飛び起きると伊右衛門の持っていた鷹が鼠に変わり伊右衛門に襲いかかる。そしてお岩は死霊の姿に変わり消えてしまう。

伊右衛門はお岩の亡霊に悩まされ続けて、念仏を唱えてもらっていないとうなされてしまうまで、すっかり弱り果てていた。

伊右衛門に高師直の仕官の使者が訪れて、お墨付きを見せてくれと迫り、借金の方に渡した長兵衛さがして返還を求める。長兵衛はこのお墨付きを手にしてからというもの鼠の大群に悩まされていたから清々してすぐに返す。ところが、このお墨付きを高家の使者に渡すが証文は鼠にかじられてまったく読み取れず、伊右衛門の仕官はご破算となる。

お岩の亡霊は、伊右衛門の母親お熊の喉を噛み切って殺し、仲間の長兵衛は襟にかけていた手ぬぐいで絞め殺す。

お岩の怨念の強さを思い知らされ弱り果てた伊右衛門に捕手が忍び寄りとり囲む。

追い詰めた与茂七は逃げようとする伊右衛門とは雪の降る中、立回りになるが、

伊右衛門の回りに心火が表れ、多数の鼠が伊右衛門の刀にまとわりつき、思わず刀を落としたところに与茂七が斬りつけて伊右衛門を討ち取る。

ここで、伊右衛門が見得を切り、このあと雪を用いて11段目めでたく幕。

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ここまで話を膨らます鶴屋南北という作家はすごいです。

 

H氏のHPではまた違った趣向で、アップしているようです。

 

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